2022年9月13日【基礎研究から臨床】 #基礎研究 #臨床
僕は人間の身体機能や健康や病気を出口にした基礎の基礎の基礎の研究を(学生の頃を含めて)40年以上している。その中でイヤというほど分からさられたこと:
基礎研究でメカニズムが分かっているのに、病気には治せない場合が無数にある
ということ。
もっと踏み込むと、メカニズムの詳細が分かっていて、そのメカニズムに基づいた薬も存在し、臨床試験(治験)で安全性が確認され、効果も確認されていても、その病気が治せない場合が数多くある。
もちろん、治ることも数多くあるのだけど、同じ病気で同じ治療を受けても、治る場合もあれば治らない場合もある。
単に個人差だけでもない。
理由:
僕ら基礎の研究者は、システムをできるだけ綺麗にして理想的なシステムの中だけでストーリーを作る(つまり、メカニズムの説明をする)。
でも、実際(リアルワールド)には、そのような理想的なシステムはほとんど存在しない。個人差はもちろん、とても複雑な環境や生活様式の違い、患者さんの気分の違い、過去やその時の生活の違い、などなどが掛け算以上に影響してくる。そもそも、「環境」とか「生活様式」とか「気分」とか、具体的に「何?」ということすら、無数にあり、あやふやなことも数えきれないくらいある。
サイエンスで解明するには、定義ができないと解明できないのだけど、理想的で綺麗なシステム内でのみの定義しか現状できないので、理想系で解明されたことが、リアルワールドでは一挙にことごとく崩れてしまう。
個人的には、理想系ではなく、従来のサイエンスでは定義しにくい(できない)リアルワールドの系でも通用する科学的体系や科学的アプローチができないか、と日々苦悩している。