2022年2月27日日曜日

2022年2月27日【#国際卓越研究大学】

 2022227日【#国際卓越研究大学】

先週、政府の閣議で、「国際卓越研究大学」が決定された。僕の理解では、国に10兆円規模の大学ファンドを設けて、それを運用し(JSTが外部投資ファンドへ委託して運用)それで得られる運用益を、国際卓越研究大学に選定された大学に1校辺り数百億円支援する、ということ。数校が選ばれるので、例えば、5校選ばれて、各大学へ300億円支援するとするとすると、運用益は1500億円。つまり、10兆円規模の運用益が1500億円ということは1.5%の利益率。そもそも、これは低すぎ。プロの投資ファンドが運用するなら、最低5%は担保できないとプロではない。

 

そして、支援を受けた国際卓越研究大学には、支援額を運用し年3%の事業成長を要求する、ということ。この部分が、僕にはまだ正確には理解できていないけど、以下のシナリオかと思う:

 

支援される数百億に手をつけるような愚かなことは大学はしないと信じているので(それに手をつけたらあっという間にキャッシュが無くなる)、成長分の3%を使って研究環境を整えたり若手研究者のリクルートや研究支援(設備投資など)を行うということだと僕は理解している。例えば、支援額が300億円だとすると、その3%は9億円。つまり、毎年、9億円が各大学でキャッシュとして使用可能となる。

 

もし、このシナリオになるとすると、国際卓越研究大学に選ばれるような大きな大学で、毎年9億円というのは極めて少額。毎年9億円くらいでできる研究環境整備、若手研究者のリクルートや研究支援(設備投資など)は非常に限定的で、この規模で世界のトップ研究大学に、研究インフラの観点で肩を並べるなんて不可能。

 

例えば、僕がいたコーネル大学医学研究科の例。僕は、そこで、Joseph C. Hinsey Professorという冠教授だったのだけど、これは、当時数十年前に、Joseph C. Hinseyさんが3億円を寄付して、その寄付の運用益で、Joseph C. Hinsey Professorの研究に「自由に使える」という仕組み。運用益は、毎年1500万円くらいだったので、5%ということになる。つまり、僕は、毎年、約1500万円を研究に自由に使えた。

 

このような冠教授は、コーネル大学医学研究科だけでも、数十あった。僕のより大きい寄付の冠教授だと、もともとの寄付が数十億円〜数百億円になるので(これらは、Department Chair系がほとんど)、毎年、自由に使えるのが数億円ある。

 

これは医学研究科だけで、コーネル大学全体だと、この数十倍あることになる。

 

ハーバード大学やスタンフォード大学などもっと大きな大学になると、さらにその規模は大きくなる。

 

なので、この日本の「国際卓越研究大学」事業で、米国など世界のトップ研究大学に、研究インフラの観点で肩を並べるなんて不可能。まぁ、無いよりはましなのだろうけど、、、。

 

きっと5年後とか10年後にこの事業を検証して、最初の謳い文句のように成功していない場合は、みんな忘れてそっと静かに何も無かったかのように振る舞う、というのが目に見えている。これまで、何十年、何百年と、このように、「汚点」は、皆なで「見猿聞か猿言わ猿」してきた国なので、きっと、また同じことを繰り返すのだろう。