2013年1月13日日曜日

2013年1月13日

以下、ぼくの2012年4月20日の朝日新聞Webronza から。6ヶ月以上たったので、朝日
新聞から許可を得てここにコピーします。


北朝鮮問題は他人事ではない:日本のガラパゴス化に歯止めを

  北朝鮮は今月13 日午前中に長距離ロケットで人工衛星「光明星3 号」を打ち上げたが、失敗に終わった。北朝鮮は世界の中で孤立し、韓国、米国、日本をはじめとする世界諸国より、さまざまな角度から「制裁」を受け続けている。
  日本は今のところ、世界諸国と「一見」同調しているかのように見えるが、それは錯覚だと筆者は考える。すでに、世界全体の中での日本の孤立化、さらにはガラパゴス化が潜行している。
  「ガラパゴス化」とは日本で生まれたビジネス用語のひとつで、孤立した環境(日本市場)で「最適化」が著しく進行すると、エリア外との互換性を失い孤立して取り残されるだけでなく、外部(外国)から適応性(汎用性)と生存能力(低価格)が高い外来種が導入されると最終的に淘汰される危険があるという、進化論におけるガラパゴス諸島の生態系になぞらえた警句である(Wikipediaより抜粋)。これにすぐさま歯止めをかけないと、日本は危うい。北朝鮮の打ち上げ失敗を見て、筆者がまず感じたのはこのことである。
  そこで、先ずは、筆者の考える「日本国のガラパゴス化のサイン」を列挙する。


• 村社会
 この問題は今に始まったことではなく、日本の歴史の中で長い間「引き継がれてきた風習」である。日本国内での村社会は、国、会社・学校、地域社会と、さまざまなレベルで現在も「慣習化」している。「よそ者」「外国人」にとって、疎外感を感じざるを得ない国、組織、地域社会である。

• 男女差別
 世界広しといえども、日本ほど男女差別が公然と「正当化」されている社会も現代では珍しい。企業などにおける取締役・役員などの重要ポストに女性の占める割合は、日本においては、たったの0.9%であり、世界44 カ国中41 位である(図1)。欧米諸国の10~40%、またアジアの他の諸国(タイ:8.7%、中国:8.5%、シンガポール:7.3%、台湾:6.1%、インド:5.3%、インドネシア:4.5%)と比較しても、日本のそれは桁違いに低い。また、国際労働機関(International Labour Organization: ILO)が2009 年に発表した「企業におけるマネージャーレベル以上に女性の占める割合の比較」によっても、日本は9.3%と、米国(42.8%)、カナダ(36%)、欧州諸国(30~40%)、中南米(20~50%:ペル ーを除く)、オーストラリア(36.8%)、ニュージーランド(40%)、フィリピン(53.3%)、タイ(23.7%)と比較 して格段に低い。

• 年齢差別
 日本では、他人に平気で年齢を聞く。就職のための履歴書にはほとんどの場合、生年月日・年齢を記入させられる。定年退職の年齢がほぼ一律決められている。多くの職場での給料体系に年齢が反映されている。これらは、年齢差別以外の何者でもない。

• 「画一性」と「平等」の混同による差別
 日本では、相変わらず「護送船団方式」が蔓延している。人それぞれ、能力、得手不得手、性格、など違うにも関わらず、全ての人たちを同じように扱わないと「差別」だと批判される。全ての人たちに「機会」は平等に与えられるべきだが、その結果、それぞれの人たちの能力、得手不得手にしたがって扱いは違って当然である。全ての人たちを「画一的」に扱おうとすると、「護送船団方式」になってしまう。これでは、能力が高く、意欲のある人たちに対する差別であり、そのような優秀な人材が伸び伸びと社会に貢献する機会を潰してしまうことになる。

• 低い倫理観(モラル)
 日本のTV 番組は、海外からみると信じられないほどの「虐待・差別・暴力・暴言・モラル欠如」で 満ちている。また、地域社会では奉仕の精神が希薄であると感じざるをえないことが多い(震災後、この辺は改善されてきた感はあるが…)。ABS-­‐CBN News の2012年の調査によると、日本人観光客の海外での行動・行儀の悪さは世界ワースト4 位という報告もある。

  以上の例を見れば、日本のガラパゴス化の度合いは深刻といわざるをえない。世界情勢が不安定になれば、ちょっとしたきっかけで、日本は世界から孤立し、それが原因で日本の世論が少しでも「頑なな方向」へ傾くと、あっという間に北朝鮮のような状況に陥る。そうした可能性は低くない。歴史がそれを証明している。
  おそらく、この論考を読んでおられる多くの読者は「そんなバカな」と思っておられるであろう。しかし、筆者は現在の日本はかなり危ない状態にあると感じている。
  世界中でグローバル化の傾向が進む一方、日本(日本人)が上記にあるような問題点を早急に改善しないかぎり、日本への世界諸国(また日本国内に在住する外国人)からの批判は強まるばかりであろう。これが、国内外において、さまざまなレベルでの摩擦を引き起こし、最悪の場合は、70 年前と同じような事態に陥らないとも限らない。これらの可能性は、「笑い事」ではないと筆者は強く感じている。