2009年12月21日月曜日

2009年12月20日


今日は夏にNAISTで西大和高校の高校二年生が行った研究の成果発表会があった。僕は、すべての発表の後、バイオサイエンス研究科を代表して高校生、父兄、教員の方々に5分ほど講評を話した。その時の原稿をここに書いておく。

講評というより、皆さんがこれから5年後、10年後、20年、40年後にも頭のどこかに残しておいて欲しいなと思うことを一つお話しさせて下さい。おそらく、多くの皆さんはサイエンス=技術、モノづくり」と思われていると思うのですが、それは、サイエンスのほんの一部です。もうひとつは「サイエンス=芸術」の部分です。技術はおもしろいアイデア、道具、お金があれば生まれます。でも、芸術はそれらでは、生まれません。また、サイエンスにおいては新しい技術、新しいモノは「サイエンス=芸術」という部分なしには生まれません。「サイエンス=芸術」とはどういうことでしょうか?それは、今、我々の目には見えないモノを自分の創造力を駆使し想定し、それらが、この自然界をどのように動かしているかを論理的に説明し、この自然界の仕組みの新しい見方を明らかにするということです。絵描きや音楽家が、この世の中の様々な成り行きや感情を自分なりの解釈で、絵や音を通して表現するのと同じです。

具体的な例を一つあげます。皆さんiPS細胞というのを聞かれたと思います。これは、からだの様々な細胞を遺伝子操作することによって作った万能細胞のことです。iPS細胞は2006年に本校に以前おられた山中先生が成し遂げられました。これは、革新的技術の開発です。これは「サイエンス=技術、モノつくり」の部分です。しかし、からだの様々な細胞が万能細胞になりうるという概念を提唱したのはJohn Gurdon というイギリスの研究者で、これは今から50年以上前のことです。これが、「サイエンス=芸術」の部分です。この、概念なしに、iPS細胞の作成は無かったと言っても過言ではありません。

では、「サイエンス=芸術」の部分が将来できるように今から何をしたらいいでしょうか?沢山あるのですが、そのうちの二つを皆さんに伝えさせてください。一つ目は、サイエンスに限らず、できるだけ多くのことを、見て、聞いて、読んで、それらの様々なことがすべてどの様に繋がっているかを常に考えてください。もうひとつは、自分とは何かを探ってください。そのために一番良い方法は、自分とはまったく違う文化背景、言語環境に育った人たちとできるだけ多く関わってください。

皆さんに期待します。」