2011年1月25日火曜日

2011年1月24日

アメリカではNIHのグラントに、個人の研究をサポートするRO1というもの以外に、複数の研究グループが集まって形成する大きな研究チームをサポートするProgram Project Grant(PPGと呼ばれている)というのがある。これは日本でいう新学術(旧特定)みたいなものだと思う。

PPGの日本のそれとの大きな違いは、PPGでは研究チームのほとんどがひとつの研究機関(あるいは大学)における幾つかの研究グループで形成されるというところにある。日本のそれは、ほとんどが複数の研究機関(大学)にまたがる研究グループでチームを形成する。PPGの場合は所属する研究グループが同じ研究機関(大学)にあるので、共同研究や合同ミーティングをフレキシブルに行いやすい。一方,日本のそれは、これらが困難なので、合同シンポジウムや合同ミーティング(いわゆる班会議と呼ばれるもの)が,頻繁に,何処かの場所で,泊まりこみで行われる。この合同シンポジウムや合同ミーティングのために、研究者(特に駒使い役にさせられている助教の先生たち)は、これに伴う事務的雑用に終始追われ、本来の目的であるサイエンスをする時間がなくなる。

僕はこのような班会議に出席した事がないので真相はわからないが、聞くところによると、班会議はお互いが親密度を高めたり、コネを強めたりといったことが中心になり、具体的な共同研究が生まれる場にはなっていないらしい。その証拠に、新学術(旧特定)の研究チーム内での複数の研究グループによる共著論文発表数はそんなに多くないらしい(これは僕が自分で調査したわけではなく、何人かの人達に聞いただけ)。アメリカでは、真の共同研究(つまり共著論文がPPGチームから頻繁に発表される)が行われていないとPPGとしてのファンディングは絶対にありえない。

日本はやはり「村社会」なのか、新学術(旧特定)などの場が人脈をつくることに使われていて、「複数の研究グループが集まって、個々の研究グループでは不可能な大きな研究プロジェクト、研究分野を開拓・発展させていく」という本来の目的が効率的に遂行されていないのではないかという声を僕は頻繁に聞く。

日本は極端にウエットな社会だから、ドライに真の目的遂行型社会になれといっても所詮無理な話なのかも知れない。だから僕は日本では,一匹オオカミ的な生き方しかできないのかもしれない。